2017年に公開されたチャン・フン監督の『タクシー運転手 約束は海を越えて』。
韓国では動員数1,200万人を突破するなど人々の注目を集めました。
1980年に韓国の全羅南堂光州市で民主化を求めて起こった光州事件が舞台となっており、実話を基に制作されています。
学生と市民が起こすデモ隊と戒厳軍との銃撃戦。
その無残な真実を自身の目で見た時、人はどのような行動に出るのでしょうか。
『タクシー運転手』のあらすじ
左からテスル・マンソプ・ピーター・ジェシク
引用:tistory
ソウル市内でタクシー運転手をしていたキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は男手一人で11歳の娘を育てていました。
ただ、民主化を求める市民運動などの煽りを受け、苦しい生活を余儀なくされていました。
その時、一人の外国人(ピーター/トーマス・クレッチマン)を光州まで送迎するという話を耳にします。
往復にしても十分すぎる程の金額が提示されていること知ったマンソプは娘の為に我先に、とその外国人の元へ向かうのでした。
引用:tistory
無事に光州にたどり着いたマンソプ達でしたが、軍により光州に入ることを止められてしまいます。
マンソプ達は咄嗟に機転を利かし光州に入ることに成功しますがそこで見た光景は世界、そしてソウル市内でも決して報道されていなかった荒れ果てた光州の姿でした。
驚愕するなか、偶然トラックに乗った学生集団に出会い、ピーターは取材の為に彼らに同行すると言い張ります。
引用:tistory
マンソプはピーターが取材の為に来たことを初めて知り、光州という危険な地域、そして帰りを待つ一人娘の為、一人でソウルに帰ることを決意します。
ですが結局、途中でタクシーに乗せた乗客と向かった病院で再びピーターに出くわし、ソウルへ帰ることは叶いませんでした。
嫌々ながらもピーター、そして学生集団の一人であるジェシク(リュ・ジョンヨル)と再び行動することとなったマンソプ。
3人は広場に集結していた学生や市民のデモ隊のところへ赴きます。
そこで一時の光州市民の温かさに触れていましたが、いきなり軍隊が突入してきたのでした。
引用:YouTube
瞬く間に戦場と化した広場でピーターはマンソプの逃げろという忠告を聞かずにシャッターを押し続けます。
命からがら逃げだしましたがソウルに帰ろうとしたところタクシーが故障してしまい、ジェシクの家に泊めてもらうことになってしまうのでした。
ジェシクの家族たちとひと時の穏やかな時間を過ごしていましたが、広場でまたもや軍の攻撃が行われていました。
再び無心に写真を撮り続けるピーターは軍に見つかってしまい命を狙われます。
ジェシクの助けもありどうにか逃げ切り、どうしても娘が心配なマンソプは翌朝秘密の抜け道でソウルへと帰ることにするのでした。
翌朝、ソウルへ帰る途中、マンソプはまたもや報道が事実と違うように操作されていることを知ります。
自分の乗客であるピーターを迎えに光州へと戻るのでした。
『タクシー運転手』のネタバレ・結末
引用:tistory
光州へ戻ったマンソプでしたが、情勢は更に悪化していました。
病院に駆け付けたマンソプが見たのは父親に看取られて帰らぬ人となったジェシクと現実に打ちのめされたピーターの姿でした。
ピーターは撮影する気力を失っていましたがマンソプが支え、その後も写真を撮り続けるのでした。
ついにソウルへ帰る日、ピーターの写真に気付いた軍が追いかけてきてカーチェイス状態となりますが仲間の助けもありマンソプは無事にピーターを空港へ送り届けることに成功しました。
ピーターの写真によって光州での事実は瞬く間に世間に発信されました。
ピーターは自分が写真を撮り続けることができたのはマンソプのおかげだと言い、死ぬまでにもう一度マンソプに会いたい、と願うのでした。
『タクシー運転手』を見た感想
引用:YouTube
同じ韓国にいながらも悲惨な状況が知られていない、真実が報道されない、決してあってはならないことが行われている、これはSNSやネットが発達した現代では考えられないことですが、映画を通してみると激動の1980年では、今では普通なことがいかに難しいことであったか思い知らされます。
ですが、マンソプもピーターもそんな事実に憤り、真実を伝えなければ、との正義感に溢れていたわけではなく、この映画で描かれているのはもっとシンプルな繋がりではないでしょうか。
ピーターは単純に自身の記者としての役割を果たしたかったということです。
実際、記者になったきっかけは「お金」と答えるなど、正義感は勿論ありながらも、どちらかというと自身の仕事を全うしようとすることに対する意志を感じます。
そしてマンソプも普通であればそんな恐ろしい光州にはいたくないはずです。
実際に命も狙われましたし、なによりソウルには1人娘がいます。
自身がいなくなったら、と考えると光州に残ることは非常に難しい決断であったことがわかります。
ですがマンソプもピーター同様、自身の仕事を全うしたのです。
引用:YouTube
それは最初にした約束、乗客をソウルから光州へ乗せ、連れて帰ってくる、というものでした。
お互いのそのシンプルな自分の仕事への信念が最終的には大きな行動へと繋がり、世界へ光州の実情を伝えるきっかけへと繋がっていったのではないでしょうか。