一説では、9頭身と噂されるひときわ目を引く驚異的なスタイル、日本にもファンが多い韓流トップスター、コン・ユ主演の韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、2016年に発表、翌年には日本でも公開され、大きな話題を呼びました。
また、カンヌ国際映画祭に正式エントリー。
ノンストップ・サバイバルアクションのゾンビ映画が、愛と感動の物語と共存しうることを証明してみせた韓国映画本作は、目の肥えた記者たちを大いに唸らせました。
それでは、ネタバレ必至のあらすじを追ってみましょう。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』のあらすじ
引用:tistory
午前5時30分、ソウル駅。
早朝にも関わらず多くの乗客を乗せて、韓国高速鉄道KTX101号はプサンに向けて、今正に発車しようとしています。
血に染まり、肩の一方が不自然に垂れ下がった奇妙な格好の女が現れ、発車直前の車両に身体を滑り込ませます。
女は、時速300kmで走行する密室に悲劇をもたらす、招かれざる客でした。
引用:tistory
投資信託でファンドマネージャーを勤めるソグ(コン・ユ)は、典型的なワーカホリック。
家族を顧みず、仕事中心の毎日を送っています。
一人娘のスアン(キム・スアン)のことさえ、心から気にかけている素振りはありません。
ソグの別居中の妻で、今はプサンで暮らす母に会いたいと、娘にせがまれたソグは、スアンを連れてKTX101号に乗車したのでした。
プサンに向けて出発したしKTX101号、ばらくすると、連絡通路の床でのたうち回る血にまみれた、先ほどの女が発見されます。
発見者の女性乗務員が、最初の犠牲者でした。
血まみれの女に首筋を噛みつかれた女性乗務員。
その肌には無数の血管が浮かび上がり、見開かれ眼球は白く濁っています。
引用:tistory
女性乗務員は、まるでもがくような奇妙な格好で、次々と乗客を襲い始めます。
襲われた乗客たちもまた、女性乗務員のような醜い姿となってしまい、他の乗客を襲い始めたのです。
引用:tistory
車内の異変に気づいた男性乗務員は、乗客たちを後部車両へと誘導しようと試みますが、ゾンビたちは瞬く間に増殖してゆきます。
ソグとスアンは他の乗客たちと共に、なんとか後方車両の3号車まで逃れることができました。
その頃、テレビニュースでは、デモの参加者が暴徒化し、警察や市民を襲い始めたこと、都市の機能が麻痺したことを受けて政府が非常事態宣言を発令したことを伝えました。
ソウル各地で、ゾンビたちが幾何級数的に増加していることを示唆する報道でした。
暴徒に襲われた人々、それはソグの母さえも例外ではありませんでした。
密室と化してしまったKTX101号の車内こそ、皮肉にも最も安全な場所だったのです。
暴徒鎮圧のため、軍隊が配備されたテジョンに停車を求められたKTX101号。
軍による保護を期待した乗客たちは、駅の出口を目指します。
けれども、乗客たちを待っていたのは、ゾンビと化した軍人たちの群れでした。
引用:YouTube
逃げ惑う乗客たち、最終的にKTX101号に戻ることができたのは、わずかな乗客だけでした。
KTX101号は、再びプサンに向けて出発します。
生き残った乗客たちの多くは、先頭車両に近い15号車に立て籠り、後方への連絡通路を封鎖してしまいました。
再び走行を始めた列車へなんとか飛び乗ることに成功したものの、未だ暴徒がうごめく後方車両に取り残された、ソグ、サンファ(マ・ドンソク)、野球部員のヨングク(チェ・ウシク)の三人が閉め出されたことを意味します。
引用:tistory
さらにソグたちは、12号車に、スアン、それからサンファの妻であり、妊婦のソギョン(チョン・ユミ)が暴徒に囲まれ、立ち往生していることを知ります。
ソグたち三人は武装し、ゾンビと化した暴徒と闘うことを決意します。
スアンらを救出しつつ、安全と思われる前方車両を目指すというミッションを開始するのです。
愛する者を守るために立ち上がった、三人の男たち。
その熾烈な戦いが幕を開けます。
みどころ1:光を操る最先端テクニック、その圧倒的な表現力に脱帽!
引用:tistory
コン・ユ主演、時速300kmで繰り広げられるノンストップ・サバイバルアクション、韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の臨場感を生み出しているのは、惜しみなく投入された最新技術です。
本作には「LEDリアプロジェクション」という技術が、韓国で初めて採用されています。
LEDで埋め尽くされた巨大パネルを設置、パネルの背後から映像を投影するリアプロジェクションという方式で、車窓の風景を完璧に表現しています。
また、こだわりの照明技術で車内に落ちる光さえも巧みに表現、映画にかつてないリアリティーを与えることに成功しています。
みどころ2:韓国発、ニュータイプのゾンビたち
引用:brunch
感染者(ゾンビ)の振り付けを担当したパク・ジェイン。
丸半年間、監督と二人三脚で、感染者(ゾンビ)役の振り付けを完成させました。
そして二人は、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に端を発する、でくのぼうのように身体を揺らしつつ黙して前進する欧米のいわゆる「ゾンビ」に代わる、斬新なゾンビを生み出したのです。
パク・ジェインが振り付けた感染者(ゾンビ)の動作は、ある種コンテンポラリーダンスを想起させます。
そして、もの悲しい。
おぞましさという形容詞では説明のつかない、生者でも死者でもない煉獄の苦しみ、あるいは愛する人との惜別の悲しみを湛えているような印象を受けます。
感想:まったく新しい!ゾンビ+泣ける映画の誕生
引用:brunch
『新感染 ファイナル・エクスプレス』はゾンビ映画です。
そうであるのにも関わらず、泣ける映画なのです。
詳しくご説明しましょう。
例えば、マ・ドンソク扮するサンファ。
この熊の様な風貌の立派な体格の男は、正義感が強く、心優しい。
そして何よりも、他者へ無償の愛を捧げることができる人物です。
サンファは先頭に立ち、暴徒と戦います。
愛する妻のソギョン、そして妻のお腹に宿るわが子のため、それから他の乗客のため。
自らを犠牲にした、その勇姿は見る者の心を震わせます。
引用:YouTube
サンファとは対照的に、利己的な性格のソグは最初、自分と娘のスアンが生き延びることしか考えていません。
けれども、パンデミックという未曾有の出来事が、人間は一人では生きることはできないということを、ソグに教えます。
スアンと正面から向き合うことができたソグの心に、次第に変化が現れます。
娘や仲間に徐々に心を開き、愛を再確認するのです。
別れは、誰しも平等に訪れます。
われわれは、大切な人を全身全霊を込めて愛せているでしょうか?
『新感染 ファイナル・エクスプレス』を通じて監督・ヨン・サンホは、人の愛する力を試すのです。
そして、誰かを愛する姿は美しく、いつも感動的です。
その姿を目にした時、涙が止まらなくなります。
まとめ
引用:brunch
韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』監督したヨン・サンホは社会派の作家としても知られています。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、有事に巻き込まれた際に見え隠れする人間の愚かさを忘れずに描いた、彼らしい作品です。
人々がいかに簡単にデマゴーグに踊らされてしまうか。
人々がいかに欲望に忠実となり、他者を顧みず利己的にふるまってしまうか。
KTX101号は、パンデミックが起きた社会の縮図として描かれています。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』は本当にみどころの多い作品です。
ゾンビ映画ファンも、泣ける映画が好きな方も、あるいはコン・ユのファンも、色々な視点で映画を楽しむことができます。
傑作、韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』をお見逃しなく。